「高校から柔道を始めるのは遅いのかな……」と不安になる方も多いですよね。
そこで、高校から柔道を始めた私が「柔道を始めて良かった!」と思えるようになれた経験談をご紹介します。
高校から柔道を始めた経験談
私が高校から柔道を始めた経験談をご紹介します。
キッカケは柔道部の先生に「僕! 柔道部入ります!」と冗談で言ったこと
まず、柔道部に入部したキッカケなのですが、高校一年生の夏休みが終わった頃、帰宅部だった私が柔道部の先生である担任の先生に「僕! 柔道部入ります!」と冗談で言ったことです。
もちろん、冗談で言ったので入部する気などありませんでした。
それから数時間経ち、冗談で入部したいと言っていたことも忘れていた頃、柔道部の先生から「放課後に武道館に来ること」と言われて、柔道部の先生は担任の先生なので「あれ? 何か呼び出されるような悪いことでもしたかな?」と不安に思いながら、武道館に向かいました。
武道館に着くと、先生に柔道場に入るよう案内され「座って練習が終わるまで見とけ」と言われたので、「練習が終わってから叱るつもりなのだろう……。本当に心当たりないけど、なにしたっけ?」と益々不安になりました。
そして、柔道の練習が終わり、柔道部員の一人と先生が近寄ってきて、なぜか自分に柔道着を着せた後「サンゴウですね」と意味の分からないことを会話し始め、最終的に先生から「とりあえず、明日は体操服でいいから」と言われた瞬間に、もう自分が入部していたことに気づきました。
「柔道部に入ることになってんの!? あれは冗談だよ!」と心の中で思いましたが、たしかに自分が発言したことだったので、嘘をつくのが嫌だったので発言を撤回できず、悶々としたまま入部を受け入れました。
よく考えれば、未だに入部届は出していません。
柔道の練習は、きつくて辛くて大嫌いだった
仕方なく入部したものの、部活はしっかりと毎日参加していました。
根が真面目なので、決めたことは必ずやり抜く人間だったからでしょう。
全然知り合いのいない柔道部だったのですが、性格が悪い人がいなかったので、すぐに馴染めました。
柔道の練習は、とにかく過酷なものでした。
回転運動をした後、『すりあげ腕立て伏せ(通称:すりあげ)』を50回も行うので、その時点で全ての体力を持っていかれました。
それから『乱取り(らんどり)』という立ち技メインで組み合う、柔道のメインとなる練習をするのですが、それがものすごくキツくて驚きました。
「こんなの毎日やってたら、死んでしまう……」
それくらい大変な練習でした。
さらに、乱取りが終わっても練習は続き、連続で向かってくる人を投げる『投げ込み』、『筋トレ』、『技の研究』と全然可愛くない練習の内容でした。
それで、やっと終わりかと思ったら「じゃ、最後、すりあげをしてから終わるか」と、練習前後で必ずすりあげ50回をするものだったので、泣きそうになるくらいきつくて、柔道なんて大嫌いとしか思えませんでした。
柔道の試合で負けた時の悔しさで、やる気が芽生えた
仕方なく入部して、仕方なく練習を続けた私でしたが、黒帯になるための昇段試験を受けることになりました。
昇段試験では、『筆記試験』『形の試験』『試合成績』にて判断されます。
『筆記試験』は、ある程度の点数がとれた手応えを感じました。
『形の試験』は、うまくできたので問題なかったかなと思います。
そして、『試合成績』ということで、実際に初段を受けに来た人と試合をしなければなりません。
私の試合の相手は、まさかの同じ高校の柔道部の幽霊部員で白帯の人でした。
全然部活には顔出さなかったのですが、昇段試験だけは受けようと考えていたようです。
私の中では、「こんな練習に来ないような人には負けたくない! だって、毎日キツイ練習してる自分が報われないなんて嫌だ!」という思いで試合に挑みました。
しかし、結果は負けてしまいました。
自分が軽量級で、相手が重量級だったので、寝技で抑え込まれて負けてしまいました。
昇段試験の結果は、不合格でした。
それが、自分にとってとにかく悔しいことだったので、泣きたくなる気持ちを抑えて決心しました。
「絶対に負けねぇ! 強くなってやる!」
この時、悔しい敗北の経験から、胸の奥底からやる気がみなぎってきました。
白帯だけど黒帯の人を投げれるようになる
昇段試験で不合格になってから、『仕方なく柔道部を続ける』から『強い柔道家になる』という目標に変わりました。
すると、練習にも力が入るようになり、とにかく一生懸命考えながら強くなる努力をしました。
そして、合宿の試合で、初めて黒帯相手に背負い投げで一本勝ちした時、涙が出るほど嬉しかったです。
その経験から、白帯なのに黒帯にも負けないようになっていきました。
人は自信がつくと力を発揮できるようになるのかなと思います。
練習試合でも、黒帯に勝つことが多くなり、「白帯なのに黒帯に勝つ」という優越感を得られるのも嬉しかったです。
ちなみに、白帯だと、他校の白帯とも仲良くなれました。
基本的に皆が黒帯なので、白帯は白帯同士で分かり合えるものがあったからだと思います。
昇段試験で初段(黒帯)になる 「白帯なのに黒帯に勝つという特別感がなくなるのが残念に思う」
いよいよ、昇段試験を受けて黒帯になりました。
黒帯になるのは、やはり嬉しいです。
苦労した分、すごく嬉しいのと、周りの仲間が祝福してくれるのが一番嬉しかったです。
ただ、白帯ではなくなったので、「白帯なのに黒帯に勝つ」という特別感がなくなり、むしろ白帯には負けられないというプライドのようなものができてしまいました。
高校二年生になると経験者の後輩が入ってくると気づき、負けたくないと思い、たくさん練習する
高校二年生になると、経験者の後輩が入ってくることに気づき、「後輩に負けていては、恥ずかしい……」という思いが芽生え、さらに練習を重ねていきました。
無事に後輩が入ってきても、負けないくらいの実力を身につけることができました。
やはり、ライバルという存在は、強くなるためには必要なのでしょう。
副主将に選ばれ、団体戦のレギュラーになる
高校二年生になり、三年生が引退した後、副主将に選ばれて、団体戦のレギュラーにも選ばれるようになりました。
先生が自分に期待してくれているのが分かって、すごく嬉しかったです。
この頃から、皆よりも経験が少ない自分が強くなるためには、皆と同じ練習量ではいけないと思い始め、すりあげや筋トレについては、同じ時間で2倍の量を行うようにしました。
他にも、練習後の筋トレや技の研究を増やして、『副主将としても、レギュラーとしても、強い柔道家でありたい』という自分の思いに応えていきました。
高校二年生の時、県大会の個人戦でベスト16になる
少しずつ自信をつけた私は、一年ほどの柔道経験で、当時の県大会の個人戦でベスト16に入ることができました。
高校から柔道を始めたのにもかかわらず、幼い頃から柔道をしている人にも勝利できるようになり、すごく嬉しかったです。
高校三年生の最後の県大会、個人戦でベスト8になる
そして、最後の県大会、個人戦でベスト8になることができました。
最後に負けた相手も、幼い頃から柔道をしていて、県のチャンピオンで、全国大会に出ている人でしたが、互角に試合ができていたので、それだけで満足し、負けました。
「高校から柔道を始めた自分が、県チャンピオンと互角に戦えている。それだけで満足だ。別に自分の中には、これ以上の欲しいものがない。全国大会なんて特に興味ない」
試合中に満足した私は、勝つ気持ちも無くなり、抑え込まれてアリーナの高い天井を見ながら、全く抵抗もせず「あー。終わったなー。よくここまで頑張ったわ」と思っていました。
そして、私の高校柔道は終わりを迎えました。
引退の時、自分が柔道を好きになったことに気づき、恩師と共に号泣
教室で最後の県大会の報告をする時、今までのことを振り返ったら、『白帯だとバカにされて辛かったこと』『練習がきつかったこと』『大事な試合で負けて悔しかったこと』様々な思いが溢れてきて、涙が出てきました。
「柔道はとにかく大嫌いでした……」という言葉から始まった私の話でしたが、最後は泣きながら「柔道が大好きになりました! 先生、本当にありがとうございます!」と言ったことを今でも覚えています。
担任でもある柔道の先生も泣いていて、そのまま抱き合ってしまいました。
自分にとって、柔道がそれほど大切なものになっているとは、気づきませんでした。
高校卒業前に『二段』になる
そして、高校卒業前に『二段』になることができ、私にとって柔道は自慢の特技になりました。
柔道で得たもの
私が柔道を通して得たものを紹介します。
『精力善用』『自他共栄』の精神
柔道家なら会得する考え方『精力善用』『自他共栄』の精神で、柔道の創始者『加納治五郎師範』の言葉です。
簡単に言いますと、精力善用とは『身につけた自分の力は、世の中に役立つように使いましょう』、自他共栄とは『相手がいるから自分も成長でき、自分がいるから相手も成長できる。だから自他が共に栄えるためにも、互いに信頼し助け合いましょう』といったものです。
これは、柔道だけでなく、全てのことに通用する言葉だと思います。
この言葉があるからこそ、柔道は武道であり、心が強くて優しい人にも成長できるのでしょう。
どんな困難でも諦めずに最後まで取り組む強い心
柔道の練習は、とにかく過酷です。
だからこそ、その修行を経て『どんな困難でも諦めずに、最後まで取り組む強い心』が身につけられました。
きついことがあっても、柔道の練習に比べれば、かわいいものだと思えます。
一般人が相手なら負けない自信
もし、大切な人を助ける時や、自分の身を守らないといけない時に、相手が一般人ならば負ける気がしません。
もちろん、武器を持っている相手であれば、話は別ですが。
それでも、自分が何かを守りたい時に柔道が役に立つのであれば、御守り代わりにもなるかと思います。
最後に一言「柔道は高校からでも全然遅くない!」
私自身、元々格闘技をしたことはありませんでしたが、高校からの柔道で十分強くなることができました。
「高校からだけど大丈夫だろうか……」と悩んでしまうこともあるでしょう。
ただ、その自分の中に芽生えた「やりたい!」「やってみたい!」という気持ちを大切にし、一歩踏み出してみると世界が変わることもあります。
簡単な道ではありませんが、得られるものは大きいです。
だから、私と同じように高校からの柔道に挑戦してみてはいかがでしょうか。
本記事を最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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